今回、訪れたのは、湖南市夏見にある「了安寺」です。滋賀県内でも珍しい種類の「阿弥陀如来像」や、以前の本堂につかわれていたケヤキを用いて新たに改修された本堂について、お話をお伺いしました。
甲賀二十五霊場唯一、“中品上生”の阿弥陀如来
了安寺の阿弥陀如来は、非常に珍しい阿弥陀仏像です。
阿弥陀様には9つの種類があるんですね。上品・中品・下品(じょうぼん・ちゅうぼん・げぼん)と上生・中生・下生(じょうしょう・ちゅうしょう・げしょう)。
親指と人差し指で輪をつくることを上品、親指と中指なら中品、親指と薬指なら下品といいます。また、両手を胡坐の上に置くと上生、両手を胸の前に開くことを中生、片手を上に向け、片手を下向きにすると下生です。これらの組み合わせによって「上品上生」「中品下生」などと9種類に分けることができます。
了安寺の阿弥陀様は「中品上生」。甲賀組第一部法然上人二十五霊場では、了安寺だけです。滋賀県内にも2体しかありません。一般の在家の方、檀家さんの家にある阿弥陀様は、下品(げぼん)が多いです。
種類にはそれぞれに意味があります。興味を持った方はぜひ調べてみてください。
本堂建て替えとケヤキの活用
了安寺では、平成7年に本堂を建て替えました。お参りいただくとわかるかと思いますが、ほかのお寺に比べて本堂の天井が高いです。
境内から階段を上がり一般の方々がお参りされる場所を「外陣」、寺方が来る場所を「内陣」といいます。外陣でお参りしたときに、どこからでも阿弥陀様が見えるようにとのこだわりです。
また、阿弥陀さんがのっている結界を須弥壇(しゅみだん)といいます。須弥壇と前机は、ケヤキです。ケヤキは硬くて丈夫ですから、ケヤキでつくりたいとの思いがありました。ケヤキは、昔つかわれていたものの再利用です。
江戸時代の了安寺の檀家さんたちは、おそらくお百姓さんたちが多数を占めていたと思われますから、費用を捻出するのも大変だったことでしょう。おそらく食べるのもやっとの時代。当時から、信仰が厚かったのだと思います。
ケヤキの良さを地で生かすことを考えた結果、本堂はとてもシンプルなものになりました。お越しになられた際には、ぜひケヤキの美しさも見ていただきたいですね。
了安寺の寺号・山号について
了安寺の寺号は、本堂建て替えの際に以前の文字をかたどって、ケヤキでつくっています。また、了安寺の山号は「梅見山」。資料は残っていませんが、境内から梅の花を見ることができるため、梅見山と名付けられたのではないかと思っています。
浄土宗のお寺には、寺号・山号・院号があります。名前には各お寺のルーツが関係していますから、ほかのお寺についても調べてみると、なかなか面白いかもしれません。
No. | 14番 |
本霊場 | 正林寺 |
寺院名 | 了安寺 |
所在地 | 湖南市夏見502番地 |
連絡先電話番号 | 0748-72-0733 |
FAX | |