今回、訪れたのは、湖南市岩根にある「正法寺」です。2つのお堂と2つのご本尊がある珍しいお寺。お寺が所有する文化財のことや、浄土宗の教えについても、お話をお伺いしました。
阿弥陀さんのお堂と、お釈迦さんのお堂
正法寺には、2つのお堂があります。阿弥陀さんのお堂と、釈迦堂という小さなお堂です。もともと、正法寺は室町時代からある浄土宗のお寺。明治時代になり、同じ地域にあった禅宗のお寺を移築し、本堂をもってきたことで、お堂が2つ、本尊さんも2つというかたちになりました。
お寺を合併すること自体は、実はそれほど珍しいことではありません。ただ、禅宗のお寺を吸収合併するかたちで、お釈迦さんをお祀りしているお堂があることは、珍しいと思います。お堂が移築されたのは、明治時代のことです。釈迦堂ができたのは、正法寺にとって大きなできごとといえます。
文化財と関ヶ原の合戦時代のお墓
正法寺には、湖南市の文化財が3つあります。阿弥陀さんと鬼の面、そして涅槃図です。鬼の面は普段は琵琶湖文化館の中に仕舞われていますが、毎年2月の1ヶ月間だけ正法寺に来ていただくと拝むことができます。
江戸時代につくられた鬼の面は、2月の節分のときに、追儺(ついな)式を行っていたときのものです。追儺式は、京都の吉田山神社が有名ですね。かなり経年劣化が進んでいましたが、京都の国宝や重要文化財を扱っておられる業者さんに依頼し、修理していただきました。
一般的にお寺には、故人の戒名や俗名、死亡年月日などを記しておく「過去帳」があります。正法寺の過去帳に残っている最も古いお墓は、関ヶ原の戦いの頃に亡くなられた方です。お寺そのものの歴史は、さらに古いものですが、実際に地域に暮らしていた方のお墓としては、慶長2年と記されています。
村のために力を尽くしてくださった方です。毎年お盆には、男の方がお参りする集まり「念仏講」があり、そのときにお墓まいりも行われています。
浄土宗の教えをわかりやすく伝える工夫
正法寺では、浄土宗の教えをできるだけわかりやすく伝えるために、さまざまな工夫を取り入れています。
例えば、貪瞋痴(とんじんち)の三大煩悩についてのお話の場合であれば、湖南市石部にある障害者支援施設「もみじ」「あざみ」にお願いしてつくっていただいたアイテムを使います。親しみを抱いてくださる方も多いですよ。
「貪」は、貪欲、むさぼりの心です。人のむさぼりの心は、海より深い。「瞋」は、怒りの心です。腹を立てたり人を妬んだりしてしまう心です。瞋恚の炎(しんいのほむら)という言い方をするんですけど、怒りの心はメラメラと燃えます。欲張る心は海より深く、怒る心はメラメラと燃えてしまう。
そして最後の「痴」は、無明(むみょう)ともいいます。人間の愚かさ、物事が分からないという愚かさです。これは、暗闇の中ですね。
また、本堂にある羅網(らもう)は、美しいと言っていただくことも多いですが、見た目だけでなく、きちんと意味があるものです。お経には、阿弥陀さんのお慈悲を表していると説かれています。お寺の本堂の中では、極楽世界の有様を扱っていますから、ひとつずつ意味を知ると、なかなか興味深いのではないでしょうか。
お参りに来られた際には、こういったこともお話いたします。
No. | 18番 |
本霊場 | 月輪寺 |
寺院名 | 正法寺 |
所在地 | 湖南市岩根3748 |
連絡先電話番号 | (未) |
FAX | |