甲賀組第一部法然上人二十五霊場

正福寺の歴史を知ろう。
正福寺レポート

今回、訪れたのは、湖南市正福寺にある「正福寺」です。国指定重要文化財の「大日如来」や「現当二世」の意味、正福寺の歴史についてお話をお伺いしました。

正福寺の歴史について




正福寺は、聖武天皇の時代、国家鎮護の祈願所として建てられたお寺です。平城京から見て東北の鬼門にあたる方角がこの地域なんですね。ですから、菩提寺・正福寺・岩根というこの辺にお寺が何十もできて、鬼門を守ったというところからはじまっています。正福寺を建てられたのが良弁僧正。奈良の東大寺をお建てになった方です。その良弁さんが正福寺の開基です。

明治時代の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)があり、その後、この地域には正福寺を含めて3か寺が残りました。その後、終戦直後の昭和21年ごろに、村の人たちが「3か寺あると経済的負担も大きい。軽減してほしい」と言われたそうです。そして一本化しようということで、東西にあった「永巌寺」と「清寿寺」を吸収合併しようと。

正福寺はもともと、檀家のないお寺だったんです。一方。東西のお寺は、浄土宗ですから、阿弥陀三尊が御本尊として祀られていました。両寺の阿弥陀三尊を正福寺がお預かりして、現在の形となっています。形態としてはかなり珍しいかたちだと思いますね。




本尊胎蔵界大日如来と「現当二世」





正福寺には、国指定重要文化財の「大日如来」があります。大日如来には「胎蔵界」と「金剛界」の2種類がありますが、胎蔵界はとても貴重です。正福寺にあるのは、近江最古の胎蔵界の大日如来です。

大日如来は、現世利益の仏さまですから、一般的には、私たちが生きている世界、いわゆる現世だけの仏さんだと理解されますが、正福寺は「現当二世」です。現世と来世。なぜかと申しますと、阿弥陀さんは来世だけ。往生すること、お念仏を申すことで往生させてもらって、お浄土へ行ってからまたお念仏で修行して成仏するといった、二段構えの考え方です。「来世往生」といいます。

正福寺には、未来往生の阿弥陀様と現世の大日如来の両方がおられる。だから、現当二世。現世と来世の両方をちゃんと守っていただいていますよということを「二世安楽」といいます。




十一面観音立像の化仏盗難騒ぎ





正福寺には、大日如来以外にも、十一面観音立像が4躯、観音堂に薬師如来坐像と地蔵菩薩半伽像と、合計6躯の重要文化財があります。ただ、合併したのは昭和21年ですが、観音堂が完成したのは昭和45年。つまり20年あまり、住職が住んでいないお寺に仏さんが留守番されていたことになります。しかし、そのときに化仏が1躯、盗まれてしまった。

檀家さんの中に、岡倉天心の孫弟子、いわゆる仏師がいたため、所轄の警察署に目をつけられてしまいます。しかし、村長や住職をはじめ、村の人たちが「あの人はそんなことをする人じゃない」と声をあげたんですね。事実、冤罪でした。

後日他県に住む仏像マニアの仕業だと判明し、十一面観音立像の化仏は無事正福寺に戻ってきました。観音堂には、その冤罪で疑われた仏師さんの作品である観音さんの仏頭も置かれています。

No.22番
本霊場百萬遍知恩寺
寺院名正福寺
所在地滋賀県湖南市正福寺409
連絡先電話番号0748-72-0126
FAX0748-72-0169